お部屋をすっきり見せたいときに悩みがちな本の収納。本を仕分けするための考え方から、サイズがバラバラな本の収納術、本棚以外の収納アイデアなどを住空間収納プランナーがわかりやすく解説。本を捨てるタイミングや保管方法も教えてもらいました。
目次
本のお片付けはすっきり部屋の大敵?
本の収納にまつわる悩みは、「本棚に収まりきらないほど本があり、部屋に圧迫感がある」「本棚を買うほどの量はないけれど、おしゃれに収納したい」などさまざま。
本は大きさがバラバラなうえに場所をとるので、一度増えてしまうとなかなか片付けづらいものです。部屋をきれいにするために捨てたくても、取捨選択が進まずなかなか整理できない、という経験は誰にでも一度や二度あるのではないでしょうか?
この記事では住空間収納プランナーとして数多くの家の片付けをサポートしてきた「KUUKI(くうき)」のわたべさんと、つかはらさんに、本の収納法を教えてもらいました。
本を整理整頓するためにまず考えるべき3つのこと
本の片付けを思い立ったら、いきなり作業を始めるのではなく、まずは最終的にどのような状態にしたいかをイメージすることが大切です。具体的なイメージを描くためには、以下の3ステップで自分と本の関わり方や、部屋の書籍量を把握してみましょう。
STEP1 自分のタイプを知り、優先順位を明確に
まずは自分と本の関わり方を掘り下げましょう。自分にとって本は読むことが大切なのか、保管しておくことが大切なのか、改めて考えることで機能性やデザイン性など自分にとって優先度が高い収納ポイントがわかります。
ここでは考えやすくするために、本との関わり方を3タイプに分けてみましたので、自分に当てはめてみてください。機能性も大切だけど、おしゃれな印象にもしたい、など複数のタイプにまたがるときは、どの書籍群がどのタイプなのかで分けてみましょう。
本の空間重視タイプ
好きな本に囲まれた空間づくりを大切にしている人。お気に入りの本を飾る、本棚もおしゃれな印象にしたい、など部屋とのバランスやデザイン性を重視。大切な本は捨てずに保管しておくことが多い。
機能性重視タイプ
本は読むものだから使い勝手をよくしたい人。ジャンルやカテゴリで整理して、取り出しやすさや探しやすさを重視。書籍量の多い人がほとんどで、スペースをうまく使って収納力をアップさせることが大切です。希少性の高い本を傷めずに保管する方法も知っておきたい。
ミニマリストタイプ
本は読んだら頭の中にしまうので、捨ててしまってもよい人。生活スペースから見えないように収納することや、書籍数を増やさないことを重視。書籍数が多い人は思い切って捨てることも検討中。
STEP2 本の量と内容を把握する
続いて、所持している本の量と内容を確認しましょう。買ったまま机に積んでいる本、リビングやクローゼットなど家のあちらこちらに分散している本を集めて全体量を把握してみてください。それから、今ある収納家具で十分なのか、収まりきれていないのかを判断しましょう。
また、本の内容を覚えているかどうかも大切です。放置したまま忘れていた本、表紙を見ても中身が思い出せない本は、本当に持っておく必要があるのかを考えるポイントになります。
STEP3 片付けの方針を決める
家にある本の量の見当がついたら、STEP1で確認した自分のタイプから、重視している項目に沿って片付けの方向性を定めましょう。
本が本棚に収まらないという同じ条件でもSTEP1のタイプによって対応は異なり、機能性重視タイプなら本棚の増設を検討、本の空間重視タイプなら本棚に収まる分だけ残して、収まらない分は箱にしまって保管、ミニマリストタイプなら本を捨てるという判断になる可能性があります。
もちろん状況や条件によりけりですが、何が自分にとって重要なのかを知ることで、置き場所や収納方法、手放すかどうかの判断がつきやすくなるので、STEP1、2を実践してみることをおすすめします。
本を整理整頓するための基本ワザ
タイプ別の収納アドバイスや本の取捨選択の考え方は後ほどお伝えしますが、まずはどの本にも共通する分類法や並べ方のテクニックをご紹介します。
カテゴリ、大きさごとに分類
家中にある本を集めたら、雑誌、単行本、文庫などのカテゴリ別に分けましょう。さらに本のサイズごとに分類してグループをつくると、まとまりが出てすっきりした見た目に。
棚の高さを調整しながら収納
本棚は棚板が動かせるタイプを選びましょう。本の上部の空間が開きすぎないように棚板でスペースを調整すると収納力がアップします。なるべく同じ大きさの本で揃え、わずかな隙間は文庫本などで調整してみてください。
また、本を並べる際は下段から収納していくのが鉄則。大きい本や重たい本は落ちてくると危ないので、下段をしまってから棚板をセットしましょう。
本は色別に右肩上がりで並べる
本は背表紙の色をグラデーションに並び替えると、雑然としていた本棚もきれいに見えます。書店のブックカバーごとに揃えるだけでもOKです。また、本を右肩上がりに並べると見栄えがよく、本棚全体に統一感が出ます。
本棚をいくつか置く場合は、壁と同系色の色を選びます。高さや奥行きの凹凸もできるだけ目立たないよう、同じサイズで統一するとよいでしょう。
タイプ別本の収納アドバイス
前述の「本を整理整頓するためにまず考えるべき3つのこと」で、本との関わり方別に3つのタイプを紹介しました。ここからはタイプ別にぴったりの収納法を解説します。
- 本の空間を美しく見せる収納法(本の空間重視タイプ)
- 機能的に整理する収納法(機能性重視タイプ)
- 本を見せない収納法(ミニマリストタイプ)
1.本の空間を美しく見せる収納法
「本の空間重視タイプ」の方には、本が生み出す知的でおしゃれな雰囲気を生かす収納法がおすすめです。このタイプの場合は、どの本を部屋のどこに置くのかにもこだわりたいはず。本棚をインテリアの一部としたい人に最適です。
本棚にディスプレイテクを取り入れる
本棚の棚板で仕切られた部分を、ディスプレイ空間に見立てます。表紙がすてきな本を立ててアクセントにしたり、あえて本ではなく、小物や雑貨を飾ったりするとおしゃれに見えます。
本を表面向きで立てられるブックスタンドは雑貨店や100円ショップなどで購入可能です。
本の並べ方には余裕をもって
本棚をすべて本で埋めてしまうと、どうしても圧迫感が生まれてしまいます。あえてスペースを空けてゆるめに並べると、抜け感があっておしゃれに。3連ブックエンドを使えば、本が倒れる心配もありません。
本棚以外の収納を使う
あえて本棚ではないところに置くのも“見せる収納”として効果的です。例えば、雑誌、写真集などをマガジンラックやカゴの中に入れてみるのもおしゃれ。出窓やチェストなど家具の上にブックエンドを使って本を並べても整って見えます。
本棚を買うほどではないけれど、きれいに整理された状態で本を並べたいならカラーボックスを本棚のように使ってみるのもよいでしょう。
カラーボックスは縦にすると1段がA4サイズほどの高さなので、文庫本やハードカバーの単行本を並べると上部が余ってしまいます。その場合はカラーボックスを横置きにしたり、収納棚を設置したりするなど工夫してみてください。いくつか並べるなら、同じサイズを買うと統一感が出ます。
見え方に気を配る
基本ワザでご紹介したように、サイズや背表紙の色を揃えて収納すると、整頓された印象を与えることができます。やや極端な例ですが、背表紙ではなく反対側を表にしてしまうと文字もなくすっきりするので、人によってはおすすめ。
また、お気に入りの本を見える位置に飾ると、ふと目にしたときに気分をあげてくれる効果も。
本棚選びは高さや色を重視
本棚は、なるべく壁に近い色を選び、腰のあたりの高さであれば圧迫感は少なくなります。本が見える位置にあると部屋の雰囲気と合わないという人は、扉付きの収納棚やロールスクリーンで目隠しすることも検討してみましょう。扉が付いていれば、キッチン収納用の棚なども本棚として活用できます。
2.機能的に整理する収納法
「機能性重視タイプ」に当てはまった方は、思い立ったときに目当ての本をすぐに探せる検索性と利便性の高い収納法がおすすめ。本を仕分けして収納するコツや、効率的に大容量の本を収納する方法を伝授します。
どこに何があるかわかりやすく分類
本が大量にあって収納しきれていないという人は、基本ワザで触れたように、ひとまず一か所にすべての本を集めて仕分けしていきます。サイズや大まかなジャンルで分けた後は、作者・著者別やシリーズごとなど”マイルール”を設定して、探しやすさを考慮しながら分類していきます。
作者やジャンルごとなど、区切りのよいところにブックエンドを立てると、見た目にもわかりやすく、取り出しやすいのでおすすめです。
大量の本を収納するワザと本棚の選び方
こちらも基本ワザに沿って、重く大きな本を下段から収納していきます。棚板が可動する本棚なら、本に合わせて1段ずつ高さを調整できるので、隙間なくきれいに収納でき、スペースを有効に使えます。
本棚は収納力で選ぶなら前後2列に分かれて、前列がキャスターで可動式になっているタイプもあります。奥行があれば文庫本は前後2段に収納できるので、よく手に取る本を前に、そうでない本は奥に配置するとより機能的です。
本を置く場所は動線を考慮して
普段の生活と照らし合わせ、使い勝手がよい場所に本を置きましょう。例えば、レシピ本はキッチンに、ファッション雑誌ならクローゼットの近く、仕事関連の本は書斎、など用途に合わせて配置することで手に取りやすくなります。
本棚を掃除しやすくなる工夫を
本の量が多いこのタイプは、どうしても掃除が面倒になりがち。とくに大切に保管しておきたい書籍は扉付きの書棚に入れるなど、ほこりや日焼けの害を受けないように気を付けておきましょう。
また、定期的な掃除を習慣づけるために、気軽に手にとれるハンディタイプのほこり取りを本棚の近くに置いておくことも大切。週に1回程度の掃除が目安です。
3.本を見せない収納法
「ミニマリストタイプ」に当てはまった方は、本を生活空間に登場させないスマートな収納法がおすすめ。置き場所の工夫や収納グッズをご紹介します。
収納グッズで見せずにしまう
手持ちの本が少なく、あまり人目につくところに置きたくない人は、ファイルボックスや100円ショップで売っているマガジン収納袋などに入れて保管しましょう。
押入れがあれば、キャスター付きのカラーボックスを下段に設置し、必要なときに引き出して本を探すといった収納法もおすすめです。また、扉付きの本棚はあらかじめ目隠しが付いています。耐震ラッチの付いた扉なら、いざというときに本が飛び出さないので安心です。
小さいサイズの収納を場所ごとに活用
少量の本なら、カゴやミニ本棚、シェルフを使ってもかわいく収納できますし、圧迫感もありません。そのうえでレシピ本ならキッチンに、写真集や雑誌はリビングに、小説は寝室へ、など本をよく読む場所ごとに収納場所をつくってあげると、自然にカテゴリ分けもされて使いやすいです。
トランクルームにまとめて保管
例えば「子ども部屋を作るために今だけ本をどかしたい」といった動機をはじめ一時保管したい本があるなら、トランクルームに預けるのも一案です。
中に何が入っているかさえ把握しておけば、子どもが大人になって部屋が空いたらまた本棚に入れるもよし、そのまま捨ててもOK。なんとなく捨てにくい本の保管にもぴったりです。
本の量を減らす仕訳け方と考え方
本はなかなか捨てられない人が多いもの。捨てるタイミングや取捨選択の方法など、以下を参考にしてみてください。
取捨選択の基準をつくる
本を買い続けて捨てずにいると膨大な量になってしまいます。整理にあたっては、取捨選択していくことも重要です。例えば旅行ガイドブックなど、数年で情報が古くなる本は取っておく必要がありませんよね。
教科書をはじめとした子ども関連の本は「子どもが3年生になったら1~2年生の教科書は捨てる」など、あらかじめ捨てるタイミングを決めておくと良いでしょう。子どもや孫に読ませようと保管している本があるなら、読む本人に判断してもらうのが一番です。
読んだか覚えていない本、買ったまま数年放置した本などはそろそろ捨てても良いかもしれません。また、トランクルームを自分専用の書庫として借りるのも、家の中に本を増やさないためのよいアイデアです。
ため込まないためのルールづくり
本の整理が億劫なら電子書籍で購入したり、図書館を利用したり、あらかじめ本を手元に置かない工夫もできます。「1冊買ったら1冊捨てる」「本棚に入る量しか持たない」などのマイルールを決めるのも効果的です。
本を美しいまま保管するには
本は保管方法によって、湿気によるカビや虫が発生したり、日光で色褪せしたりとダメージを受けます。ほこりも虫やアレルギーの原因になるため気をつけてください。そのため、直射日光を避けて風通しのよい場所で保管することが大事です。
長期間段ボールなどで保管する場合は、防虫剤、脱湿剤を入れてあげるとカビの心配がありません。また、あまり本を動かさない本棚にはほこりがたまりやすくなるため、1週間に1回程度はさっと拭きましょう。
本棚に布をかけたり、ロールスクリーンを設置したりして、物理的にほこりをシャットアウトするのもおすすめです。
本のある暮らしをイメージして収納を考えよう
趣味用、仕事用、そして子どもの絵本など、本にはさまざまな用途があり、大きさや読む頻度もさまざまです。本の量も人によって大きく変わってくるので、収納に悩まされる人も多いでしょう。
自分自身の本との向き合い方によっても、整理収納の方法が変わってきます。まずは本のある暮らしをイメージし、生活にあった収納法を見つけてみてください。
<監修者>
つかはらあずさ(左)/わたべしのぶ(右)
「気持ちのよい空間づくり」をめざし、2013年に収納インテリアサポートサービス「KUUKI(くうき)」を母娘で立ち上げ。住空間収納プランナー、空間スタイリストとして、片付けや空間づくりに悩む個人から店舗まで900軒以上のサポートを手がける。最近ではYouTubeで「KUUKIの片付け収納」として生活のアドバイスを配信中。HP https://kuu-ki.com/